国債を発行すると円安になる?

こんにちはこんばんはいらっしゃいませおはようございます。僕です。

「国債を増発すると円安になる」としばしば耳にする。
その理由として、国の信用力が低下するからと説明されたりする。
「円安になる」ということは、為替レートについて考えなきゃいけない。
為替レート国債発行深掘りしていくと、日本経済が抱える構造的な問題が浮かび上がってくる。
企業の賃金抑制行動や最低賃金政策の遅れ、さらに世界の経済情勢に合わせた政策調整の重要性についても考えなきゃいけない。

国債ってなに?

まず、国債とは、国が発行する借用証書のこと。
簡単に言うと、国が「これだけお金を預かりました」ということを証明するもの。
地方自治体は地方債、会社は社債って呼んだりする。
そして、日本の国債は「円建て」で発行されている。
円建てとは、円で元本を払い込み、円で償還金や利息を払うことを約束しているということ。
円は、基本的に現金と預金。
つまりお金。
貸主からすれば、「円」を貸して「円」で返ってくるということ。
これが円建て
日本は円建て国債を発行することで資金調達をすることができる。
つまり、国が資金調達のために発行するものが国債ということ。

☟元本払込

☟償還・利息

これが円建て国債
円以外の通貨でやり取りする場合は「外貨建て」って言ったりする。

円安ってなに?

まず、為替というは、異なる通貨の交換のこと。
日本人が海外旅行に行くときに円をドルに両替する、これが為替取引
そして、為替市場とは、通貨同士を交換する大きな市場のこと。
つまり、世界中の銀行や企業、投資家が参加して毎日巨額の通貨を売り買いしている場所のこと。
その中で出てくる為替レートというのは、異なる通貨の交換比率のこと。
たとえば、1ドル150円なら「1ドルと150円が交換できる」ということ。
この異なる通貨の交換比率である為替レートは、世界中で24時間動き続けている為替市場の中で決まるもの。
この異なる通貨の交換比率である為替レートで出てくるのが円安
円安は、円の価値が下がること。
たとえば、1ドル100円から1ドル150円になれば、同じ1ドルを買うのにより多くの円が必要になるので、円の価値が下がったといえる。
円安は「日本円の購買力が下がる」ことを意味し、反対に円高は「日本円の購買力が上がる」ことを意味する。
円安が起こる理由としては、為替市場で「円を売って外貨を買う」という動きが強くなることが挙げられる。
これは、相対的に円の需要が低くなることで起こる動き。
逆に「円を買って外貨を売る」動きが強まれば円高になる。
円安の影響として、輸出企業には有利、輸入品の価格は上がる(原材料・エネルギーコスト増)、家計にとっては物価上昇として負担になるなどがある。

国債と円安の関係

国債と円安が何なのか分かったところで、「国債を増発すると円安になる」について考えてみる。
まず確認しておきたいのが、国債と円安は直接的には影響しないということ。
国債は銀行や企業が買い受けることで起こる国内の円の移動
対して、円安は相対的な円の需要の低下という外貨との交換比率の動き
国内の動き外貨との動きは別の軸なので直接的には関係していない。
ただ、国内の動きが外貨の動きに影響を与えるという間接的な関係はある。
その間接的な関係の一例として挙げられるのが、「国債を増発すると円安になる」という表現。
これは、国債を増発することで財政悪化懸念から国の信用力が低下し、円の需要が低くなるというもの。
国が資金調達のために発行するものが国債なので、より多くの資金調達をしたいときに国債を増発する。
より多くの資金調達をしたいということは、お金が足りていないということなので、財政が悪化していると考えられる。
この財政の悪化に対して貸主が、「返せなくなるのではないか?」と思うようになる。
この「返せなくなる」というのが、デフォルト(債務不履行)というもの。
これを国の信用力とも表現できる。
返せなくなるかもしれないと思うような国の信用力は低くなる。
貸主からすれば、お金を貸す用意はあるが、貸したお金が返ってこなくなるということは避けたい。
なので、円で国債を買うのではなく、外貨で別の国の国債を買おうという動きが為替市場で起こる。
この動きは相対的な円の需要の低下なので、円安が起こる
これが、「国債を増発すると円安になる」という流れ。
ここで注目したいのが、返せなくなるというデフォルト(債務不履行)の部分。
財務省は『外国格付け会社宛意見書要旨』の中で「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」と公式に説明している。

これは、政府には通貨発行権があることから、「お金を生み出す力を持っているので、預かったお金が返せなくなるということは起こり得ない。」ということ。
お金を生み出す力があるのになぜお金を借りるのかということについては考察の余地があるけど、とりあえず今は置いておく。
この「自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」ということが十分に市場参加者に理解されていないため、国債発行の拡大を「財政不安」と受け止め、円が売られるケースがあるのも事実。
つまり、正しい情報が市場に浸透していないこと自体が、国債発行に伴う円安要因として作用しているといえる。
自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」ということが市場参加者の共通認識となれば、「国債を増発すると円安になる」という現象は起こらなくなる。
市場参加者の認識次第で、国債の増発が円安を起こすかどうかに関わるという意味でも、国債と円安は間接的な関係に留まるといえる。

ハイパーインフレのリスク

国債の増発に対して「このままでは日本もハイパーインフレに陥るのではないか」という声もある。
結論からいえば、国債の増発でハイパーインフレが起きる可能性は極めて低い。
ハイパーインフレとは、人々が貨幣の価値を信じられなくなり、通貨が単なる紙切れと化す状態のこと。
つまり、貨幣価値がなくなるということ。
ハイパーインフレの根本的な原因は、国債の増発でも通貨発行でもなく、生産能力の破壊だと考えられる。
具体的には、

  • 戦争や自然災害で生産能力が破壊される
  • モノやサービスを生産・供給する能力が破壊される
  • 供給が追いつかない
  • いくらお金を刷ってもモノがない
  • お金の価値はモノに対して暴落
  • 通貨の信用が失われる

という流れで、ハイパーインフレが引き起こされる。
今の日本のように国民の金融資産が潤沢で、世界最大級の純債権国である国では、ハイパーインフレは現実的に考えにくい。
さらに、政府には徴税権という強い収入源があり、債務の一部は必ず回収できる仕組みになっている。
加えて、国債は日本国民が直接・間接的に保有しており、国民の資産と表裏一体の関係にある。
「円で溢れかえってハイパーインフレになる」というお話もあるが、現実には大規模緩和を続けても日本はむしろデフレ傾向が続いてきた。
これは、円という通貨の信認が強固である証拠ともいえる。
このことから、国債の増発が起因するハイパーインフレのリスクはほぼ無いと考えられる。

低賃金構造と金融政策

さらに注目すべきは、日本のインフレの構造。
最近の物価上昇は原材料や輸入価格の上昇に由来するコストプッシュ型インフレであり、賃金が十分に追いついていない。
企業は、利益が出た場合に、

  • 内部留保の積み増し
  • 手厚い株主配当
  • 役員報酬の増加

をする一方で、賃金水準については抑制的
これは企業にとって賃金が固定的コストであるため、なるべく圧縮したいという合理的な行動の結果ともいえる。
さらに、最低賃金の引き上げや賃金上昇支援といった政策が後手に回っていることも、賃金が上がらない一因となっている。
こうした賃金の伸び悩みは、中央銀行が十分な利上げを行いにくい状況を生み、結果として海外との金利差が拡大し、円安が進行する要因になっている。

インフレ・デフレと為替相場

インフレやデフレは、為替と必ずしも直接的に結びつくわけではない。
インフレもデフレも、やはり国内の需要と供給のバランスのお話。
これをミクロと捉えるかマクロと捉えるかのお話もあるけど、とりあえず今は置いておく。
為替レートは

  • 金利差
  • 貿易収支
  • 資本の流れ

などいろんな要因で決まるため、国内の需給バランスが直接的に影響するわけではない。
インフレやデフレは中央銀行の政策金利の決定に影響を及ぼして、結果的に為替相場へ間接的に波及する。
たとえば、物価上昇(インフレ)に対して利上げを行えば円高要因になり、逆に金利を据え置いて海外との金利差が広がったならば円安要因にもなる。
こんな感じに、インフレやデフレだけをもって、円安を引き起こすかどうかは判断できない。

世界経済と政策調整

こうした背景を踏まえると、日本は「世界の景気動向」「各国の金融政策」など、世界経済と歩調を合わせた政策調整の重要性が見えてくる。
世界経済に合わせた財政・金融政策の調整を行うことで、過度な為替変動を防ぎ、円相場の安定を図るべきだといえる。
また同時に、持続的な賃金上昇を促す

  • 最低賃金の引き上げ
  • 中小企業の価格転嫁支援
  • 労働移動の円滑化

などの政策を積極的に打つことで、インフレ局面でも健全に利上げできる土壌を整え、為替の安定に寄与することが期待できる。

まとめ

国債発行と円安の関係を一言で片付けるのは簡単だけど、その裏には

  • 市場に十分に浸透しない正しい情報
  • 企業の賃金抑制行動
  • 政策対応の遅れ

など、複雑に絡み合った要因がある。
これらを整理すると、「国債を発行すると円安になる」とは限らないということが分かる。
国債発行と為替レートの関係から、企業の賃金抑制行動と金融政策の遅れが垣間見えた。

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